編集者・ライター

1989年 7月8日生まれ、東京都下・八王子市出身。

2012年 立教大学福祉学部を卒業後、都内の企業に就職。

2012年 テレビ局でライター・AD・Webディレクター業務を担当。

2013年 出版社にエンタメ系雑誌の編集記者として勤務。

2015年 Web制作会社にWebディレクターとして勤務。ライターとしても活動を継続。

2016年 ファッション誌Web部門にライター・編集者として勤務。

 

正攻法じゃない道からライター・編集者になった

――まず、職歴がなかなか複雑ですよね。

 

ぐちゃぐちゃな経歴なんですが、順に説明していきますね。

大学を卒業後、就活を経て内定した企業に就職しました。でも、そこが詐欺まがいのことをやっていて……。

 

――ええっ!

 

研修期間中にそのことを知って、これはダメじゃんと。2週間で辞めて、元々の目標だった「書く仕事」に向けて動いていこうと決めました。

 

――「書くこと」を志していたのに、新卒で出版社や編プロへ就職しなかったのはどうしてですか?

 

学生時代、特に出版業に繋がるような活動をしていたわけではないし、ライティングや編集に関わる学部・学科にいたわけでもなくて。出版社が狭き門なことも知っていたから、新卒という正攻法じゃなく、いろんな武器を手に入れながら3〜5年かけて辿り着こうと思ってたんです。

 

――なるほど。では最初に一般企業に勤めたのも、計算のうえで?

 

一応は。3年はいようと思ってたら2週間で終わっちゃったんですけど(笑)。しばらくフリーターみたいなことをしていたら、大学時代に知り合った人に声をかけてもらってテレビ局で働き始めました。そこがライターとしてのデビューです。

番組のWebサイトで出演者のインタビューをしたり、スタッフブログを書いたり、SNS運用を任せてもらったり。ほかにもWebディレクター、ADみたいな動きもしてました。

 

――だいぶ幅広いですね。そんな時代を経て、いよいよ目標としていた出版に。

 

確かに華やかなエンタメ系雑誌の編集部に入ることができたんですが……1年働いたくらいで「先がないな」ということを思い知ったんです。雑誌がどんどんなくなっていく時期だったし、業界全体に元気がないから待遇面もその先を期待できなくて

 

――ああ、僕も前に小さな出版社にいたので、その「未来がない」感覚はわかります。

 

それでまた転職活動をはじめました。出版社も受けたんですが、どこも待遇面はひどいもので。悩んだ末にWeb制作会社でWebディレクターの仕事に就きました。目標に対して遠回りに見えると思うんですけど、「Webの技術は絶対に武器になるはず」という意識はあったんです。

実際、Webの経験が買われたこともあり、2017年からファッション誌のWeb部門で働いてます。

 

――複雑な経歴のそれぞれにちゃんと理由や作戦があって、最終的にきっちり目標地点に辿り着いていますよね。それがすごいと思います。

 

想定していた計画よりは辿り着くのが早かったかもしれません。

今はライター・編集者としてだけじゃなく、アクセス解析なんかのWebディレクター的な動きもしていて、これまでやってきたことが全部活かせている感覚があってうれしいです。

 

小さい頃から「言葉」が好きだった

――「書くこと」を仕事にしたいっていうモチベーションはどこから来たのか、気になります。

 

小学生の頃から言葉がとにかく好きでした

例えば、他の言語だと語気や物腰で表現していることの多い「敬意」を、日本語では「敬語」という型で表現しますよね。この仕組みを初めて習ったとき、子供心に「かっけえな」と思って。

敬語みたいなものがあるなら、どうやら言葉を使っておもしろいことがいろいろできそうだぞ、という確信めいた期待が生まれたんです。
それ以来、ひねった言い回しや表現を考えたりすることが好きになりました。

 

――なるほど、言葉への興味の入り口が本ではなかったんですね。

 

子どもの頃、本は全然読んでなかったです。大学生になってからやっと読み始めたけれど、それまでは国語の授業の「文章題」を解くのが僕にとっての読書。

でも、書くことはずっとやっていました。
例えば家電の説明書ってわかりにくいなと思って、自分にとって最高にわかりやすいビデオレコーダーのマニュアルを作ったり、既存の物語の文章や筋立ての癖を徹底的にトレースして、勝手にそれっぽい番外編を作ったり。とにかく、「いい感じの文章」を書くのが好きでした。
あとは「ケータイ」じゃなくて「携帯端末」と呼ぶとか、一つ一つの物の呼び方を吟味して、自分の発語する言葉のなるべくすべてにちゃんと納得したいという気持ちがあります。

 

――おもしろい!「言葉オタク」なんですね。確かに、普通の人なら流しちゃうところを立ち止まって考えているからおもしろいのかもしれない。

 

それに、小説は読んでいなかったけど、雑誌は子供の頃から今に至るまでとてつもない量を読んできたんです。土日に近所のTSUTAYAで立ち読みできる雑誌を全部読む、みたいなことをしていてました。

それが言葉に関する興味の土台になっているのは間違いないと思います。

 

――全部というのは、ジャンルを問わず?

 

はい。アメフトの雑誌からマダム向けのライフスタイル誌まで、何でも。

 

――それってどんな気持ちでやってたんでしょう?

 

自分なりに分析すると、とにかく他人が大好きなんだと思います。

アメフトのルールは全然知らなくても、「アメフトやってるマッチョな人たちはこう書いてあるとテンション上がるんだな」とか、何回かアメフト雑誌を読んでたらわかってくるんですよ。そういうのが本当に楽しくて。

言葉への興味と同等に、他人への興味もとても強い。その二つの興味が同時に満たせる、僕にとってこれ以上ないくらい好都合なメディアが雑誌なんだと思います。

 

多趣味を仕事に

――渡辺さんを見てると、すごく趣味が広いなと思っていて。靴にギターに音楽に……。

 

誰かが楽しんでいるなら自分にも楽しめないことはないだろうっていうスタンスで日々気軽にいろんなことを楽しんでいるんですけど、それが去年くらいから仕事に繋がりはじめました。

例えば、日本一のギターコレクターの一人と言われているギタリスト・野村義男さんのインタビューのライターを担当したこと。「ギターオタクだし、やってみない?」と声をかけてもらったんですが、最初は不安もあって。

確かにギターは大好きだけど、果たして野村さんほどの人と渡り合えるのかと……。でも、いざインタビューになったら、彼の話にずっとついていけたし、同じところで笑えたんですよね。マニアの人と話すときに「同じところで笑える」というのはとても重要なポイントで。

そこで「自分の趣味って仕事になるんだ」と手応えを感じて。

 

――それはうれしいですね。

 

多趣味をやってきてよかったなと思いました。音楽は趣味の中でも特に関心の強いもので、2018年の始めから音楽誌でディスクレビューの仕事もさせてもらっています。

もう一つ思い入れの強い仕事が、雑貨ブランド「SWIMMER」のブランド終了に伴うインタビュー記事。男性には伝わりにくいんですけど、小中学生の女子がメインユーザーの雑貨ブランドで、多くの女子が好きにしろ嫌いにしろ「自分にとってのSWIMMERの物語」を持っているというか、認知度の高い存在なんです。

 

――ひとつの時代に根ざした文化というか。

 

そうですね。そのSWIMMERが昨年6月にブランドの終了を発表して、かつてSWIMMERを使っていた人たちがSNSで次々に悲鳴を上げて、Twitterではトレンド入りしたりして。で、僕はそこで彼女たちのための記事を作ろうと思ったんです。

 

――Twitterでトレンド入りしてるのは見てました。でも、男子である渡辺さんがなぜ、そんな使命感を?

 

単純に自分にはSWIMMERのよさがわかったからです。子供の頃からかわいい、おもしろいと思って見ていた。姉と妹がいて、女子の友達が多かったというのは1つの環境的な要因かもしれませんが、ともあれSWIMMERの価値や、ファンのショックの大きさを想像できた。そして、それを「わかる」だけでは終わらせたくなかった。せっかくマスに届けられるメディアに所属しているから、できることがあると思ったんです。

そこで、SWIMMERの広報の方に取材をして、「ファンのみんながSWIMMERにお別れを言いにくる場所」として記事を作りました。
そして光栄なことに、それをきっかけとしてSWIMMERの最後のグッズが僕の所属する媒体とのコラボで世に出ました。
近所のお店が閉まってしまった人たちにも買える全国発売の品としてSWIMMER最後のプロダクトを届けられたのは、文化的にも価値あることをできた気がして誇らしかったし、本気で泣いてるSWIMMERファンのためになることが少しはできたかなと思えてうれしかった。

 

――なるほど、女子の感覚も理解できるからこそできた仕事ですね。

 

理解できるというか、単純にあまり男女で区切って考えていないし、どんな感覚にも興味が湧くんですよね。

だから正直、どちら寄りでもない中途半端な立ち位置で生きてきた感じはあったんだけど、そんな半生が報われたような気もしました。

 

 

「他人への興味」が根っこにある

――ここでちょっと話題を変えて、仕事に関して絶対に折れたくないことって何でしょう?

 

まずは基礎が間違いなくできていること。プロとして胸を張れる正確な文章を書くことです。
とにかく何事もまずはそこからだと思っています。
丁寧にルールを確認しながらやれば誰にでもできることですから。
校正・校閲は大前提として、その上でプロらしからぬ美しくない言葉遣いをしないように日々自分を疑う。
例えば「お聞きする」じゃなくて「伺う」と書く、とか。
ら抜き言葉も1つあるだけで文章全体の信頼度が一気に下がりますよね。

元々言葉に対する敬意が強かったことに加えて、ライターとしてのキャリアの始まりの時期に働いていた職場で、業態の都合上校正・校閲ルールが非常に厳格に定められていたので、人一倍敏感になっているかもしれません。

 

――言葉へのこだわりという点で今までの話から納得できるし、そういう感覚を持ったライター・編集者って信頼できると思います。

 

あと、仕事を通じて他人の興味の幅を広げられたらうれしいなと思っています。わりとおこがましいことではあるので、あくまで無理やりでない形で、ですけど。

 

――「興味の幅を広げる」。多趣味なこととも繋がりますね。

 

はい。多趣味なこともそうですが、自分の行動原理の根幹にはやはり他人への興味があるかもしれません。

 

――と、いうと?

 

言葉が好きでいろんな表現を考えるのも、趣味の幅が広いのも、「他人との共通言語を増やしたい」ってモチベーションが根っこにあって。

例えば最近まで、誰かと話すときに天気の話をしないって肝に命じてたんですよ。天気の話でめちゃくちゃ盛り上がることってないじゃないですか? 最近では天気くらい毒にも薬にもならない話題も必要な場面はあるよなと考えるようになりましたけど、相手が元々関心を持っている話題を振ることができれば一番いいとは思っていて。

 

――そのためにはいろんなことを知っていた方がいいですよね。なるほど、やっぱり本当に他人への興味が強い人なんですね。

 

そうですね。他人のことを知りたい気持ちと同時に、自分の関わった人には幸せになってほしいと思っていて、そのために、「心優しい人が得をするシステムを作る」というのを自分のキャリアを通じて実現したいこととして思い描いています。

というのも、前に働いていた職場の1つが絵に描いたようなブラック企業だったんですが、そこで働いていて「心優しい人が損するシステム」の存在を強く感じたんです。毎日朝まで働いて2時間だけ眠りに帰ってまた誰より早く出社するような仕事のしかたをしていた先輩が一向に社内で認められなかったり、評価を受けづらい仕事を割り振られていた人が辞めてはじめてその人の優秀さを上司が認識するとか。

だから、今後の世の中ではそういう人たちにこそ得してほしいなって。ライターは具体的に制度を変えられるような職業ではないけれど、それを後押しするために世の中のムードを盛り立てることには最適だと思っています。

 

――「つくるひと」がそのきっかけになればうれしいですね。ありがとうございました!(ライター:友光だんご)